理事長・病院長からのメッセージ

理事長・病院長からのメッセージ

理事長・病院長


理事長 決めた理由

「なぜ病院の場所を移転して新築しようと思われたのですか?」
これは多くの人たちから尋ねられる質問です。もちろん、理由は多岐にわたるのですが、「今までにない、おもしろいこと、楽しいことをしたいと思ったから」というのが最大の理由です。病院なのに「おもしろい」とは不謹慎だと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこにはこんな思いがあります。
前身の丸山医院から数えると五十有余年、丸子の地で良い医療・介護サービスを提供しようとしてきました。丸子にお住まいの方たちには、多くの人に立ち寄っていただいた場所となっているでしょうし、職員だけ考えても膨大な数の人たちに支えられてここまで来たと考えています。それは私が想像していたより「大きな財産」なのだと最近感じ始めています。
その一方で、日々の診療、生活に追われ、私も含めた職員諸君が目標を失い、仕事がマンネリ化し始めていたのも事実です。職員に「なぜそんなことをするの?」と問うても「今までこのようにしてきたから」と答える職員が多くなってきていました。「今までしてきたから」というのは、考えて仕事をしていない証拠ですし、職員も仕事におもしろみも感じないでしょう。仕事がおもしろく感じられなければ、当然質も上がりません。
環境を変えることによって、何かが変わるのではないか。今考えると私自身もそんな漠然とした気持ちで移転に踏み切った、と言ってしまってもよいかもしれません。
しかし結果的に、移転事業を通して、医療介護分野以外の方とも知り合うことができました。この事業をしなければ出会えなかった各界の「プロフェッショナル」な方たちの思いをお聴きすることができました。そして、その方たちはみな一様に輝いていました。これはとても刺激的な出来事で、閉鎖的な病院の門戸を開かなければならない、否、それだけでなく、地域に我々が飛び出していかねばならない、と考えるようになりました。
病院は「病んでいる人」だけが訪れる場所と考えがちですが、私はこの病院を「どんな人でも訪れることができ、そして、訪れた方には『もう1度来たい』と思っていただけるような空間」を目指しています。
丸子の大自然の中『大きな樹』をその一環として丸子の大自然の中『大きな樹』をモチーフにした参加型アート、ビッグツリー計画を考えました。小学生や高齢者に思い思いのモチーフを自由に描いてもらい、それを集めて1つのアートとして完成させ、1階エントランス壁面に取り付ける予定です。このアイデアは、長野オリンピックの際に自分があるモニュメントに絵を描いたことが発想の原点です。何の用もないけれど、モニュメントを見に訪れたいという気持ちになります。子どもたちにも同じ思いを持っていただきたい。そして、実際に訪れていただいたときにがっかりすることのないような病院にしなければならない。それが今の私の目標です。


病院長 進む方向

私が旧丸子中央病院に最初に赴任したのが昭和42年。その時和敏理事長は8歳でした。お世話になった場所でこの(平成25年)4月よりお世話になることに感慨を覚えます。
赴任してまず聞いた話が「ビッグツリー計画」。これは良いアイデアで、前任のときにその話を聞いていれば、私もきっとすぐ実行したでしょう。
他の業態にはない、病院の特徴は「職員のほとんどが有国家資格者」という点です。ですから、病院というのは人材の宝庫なのです。その人材を病院だけが抱え込んでいるのはいかにももったいない話です。人材を地域社会で活用していただくと同時に、私たちも主体的に地域社会に参加していくべきです。今まで病院は患者を待っているだけでした。それではダメなんですね。理事長の「誰でも病院に来てほしい」という考えは大いに賛同できます。「健康な人も癒される」病院にしたいですね。
私は職員も大切にしたいと思っています。なぜなら、大切にされた経験がない人は、他人を大切にできないからです。病院の職員というのは概して大切にされてこなかったから、患者に対しても温かみを持った対応ができなかった、というのが日本の病院の歴史であるような気がします。ですから私は職員を大切にします。
そのために、職員が「この病院でしかできないこと」「この病院に来たからできること」を皆と一緒に作り上げていきます。他では経験できないこと、私はこれをindividual experience(個々の経験)と呼びますが、お金を得るだけでなく、お金で買えない貴重な体験をしていただくために、いろいろな仕掛けを作っていきますよ。
実はこの1か月でそういう仕掛けがすでに当院にいくつかあることを知りました。この病院ではAHA・BLS/ACLSコースを開設しています。このコースを当院に作り上げた医師はこう言います。「BLSコースを受講した人が、その地域に20%以上になると、その地域の救命率が飛躍的に上がることが実証されている。それをこの地域でしたいんです」。これは素晴らしい考え方で、話を聴いたときに感動を覚えました。ぜひ丸子地域を救命率の高い地域にしましょう。まず、普段昼間にこの地域にいる中学生、高校生や、リタイヤした60歳以上の希望者に受講していただきます。おそらく自ら受講を希望した方は、この理念に賛同いただけると思うので、他の皆さんにも呼びかけていただけるでしょう。そういう正のスパイラルを生みだしたいですね。
話は変わりますが、先日長野県庁に伺ってまいりましたら、信州のブランド戦略として「しあわせ信州」というキャッチフレーズを掲げているのですね。これはまさに我々の考えていることと一致します。私たちも病院をいろいろな意味で開放して利用していただきますし、病院スタッフも地域社会にアプローチして活躍します。この相乗効果によって、地域の皆さん一緒に幸せになりましょう!

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